佐野山(さのやま)
●江戸の相撲取り、佐野山は幕内にまで入った強い力士だったが、母親が病気になり、看病に時間を費やすうち、相撲の成績がジリ貧に。ついには幕下のどんじりにまで下がってしまった。「ああ、これでおれの相撲もおしまいか」そんな佐野山の嘆きを耳にした横綱・谷風は佐野山との取り組みを希望する。当時全盛の横綱・谷風と連敗続きの佐野山の取り組みに相撲贔屓はびっくり。「あんなに実力差があったんでは勝負になるまい」という声があるかと思えば「明日の取り組みは遺恨相撲だ。女をとられた谷風が佐野山を投げ殺すらしい」などという噂が飛び交う。さて取り組み当日。土俵に上がった谷風にはひとつの思案があった・・・。
相撲の世界の舞台裏を描いた噺。横綱・谷風は実在したが、同じ時代に佐野山という力士はいなかったというから、フィクションであろう。勝ち負けの星を多少無視しても横綱と幕下の取り組みが決まる経緯や、力士と贔屓との付き合いも描かれていて興味深い。権太楼はほかの落語ネタ「千早振る」「花筏」のギャグをわざとこの噺に持ってきて遊んでいる。
(https://www.dplats.jp/kura/asp/itemdetail/rakugo-dl-00012/ より転載)
CDにて