近江八景(おうみはっけい)
●「人を騙します」と看板を掲げて商売している女郎に入れあげてるアホな男が八卦見に占ってもらうといういたってばかばかしい噺。しかし、そんな噺でも、そこは上方、粋なのは落ちに「近江八景」を読み込むところ。
…八卦見がアホな男にあんたは騙されてと言うと、男は怒って女からの手紙を出して見せる。これが近江八景を読み込んだ立派過ぎる手紙(お客皆に配る宣伝ビラですな!)。
『恋しき君の面影を、しばしが程は見い(三井)もせで、文の矢ばせ(橋)の通い路や、心かただ(堅田)の雁(かり)ならで、我れからさき(唐崎)に夜の雨、濡れて乾かぬ比良の雪、瀬田の夕べと打ち解けて、堅き心はいしやま(石山)の、月も隠るる恋の闇、会わず(粟津)に暮らす我が思い、不憫と察しあるならば、また来る春に近江路や、八つの景色に戯れて、書き送りまいらせそろ、かしく」』
それを見て八卦見が、『なるほど、この文を表で判断すれば、最初、さきの女が比良の暮雪ほど白粉(おしろい)を塗り立てたのを、お前が一目みい(三井)寺より、我が持ち物にせんものと、心矢ばせ(橋)に早って唐崎の夜の雨と濡れかかっても、さきの女は石山のあき(秋)の月じゃゆえ、文の便りも片便り(堅田)。それにお前の気がソワソワと浮御堂。この女も根が道楽(落)雁の強い女じゃゆえ、とても世帯(瀬田)は持ちかねる。こりゃいっそ会わず(粟津)の晴嵐としなさい。』、男『あぁさよか、おおきありがとぉ。どぉも、さいなら』、八卦見『こりゃこりゃ、見料を置いていかんか。』、男『アホらしぃ。近江八景に膳所(ぜぜ=銭)は要りまへんのじゃ。』
(http://kita-no-kazekozoh.blogspot.jp/2010/11/blog-post_2611.htmlより転載)
桂米朝師匠のCDにて鑑賞。
先に「近江八景」の方から。遊女が自分に惚れているかどうか、を占い師に見てもらうという、割とばかばかしい噺。「近江八景」は最後に出てくるのだが、この使い方が実に美しい。サゲも決まっていて、端正だな、という印象。
…米朝師匠の演技は相変わらず安定している。久しぶりに聴くとほっとするね。
(http://d.hatena.ne.jp/Clif/20090913/p1より転載)
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