質屋蔵(しちやぐら)
●質屋の旦那が三番蔵で化け物が出るという噂を聞いて、番頭に一晩見張っていろと命ずる。しかし、番頭がただでさえ怖がりなところ、旦那が大方質草に対する持ち主の念が化け物となっているのだろうと想像を膨らませて語るものだから、番頭は一人では嫌だという。
そこで腕自慢の熊さんを助太刀に呼ぼうということになったが、呼びにやった丁稚があることないこと言うので、叱られると思い込んだ熊さんは先にこちらから謝ろうと、酒やたくあんを勝手に拝借したことをぺらぺら白状してしまう。
旦那が「いや今日はお前の腕自慢を見込んで、化け物が出ないか見張って欲しい」と頼むと、急に弱腰になった熊さんだが、そのまま逃げることもできず、番頭と熊さんで一晩三番蔵の見張りをすることに。
最初は怖がっていたものの、酔っ払うとどうにかなるとたかをくくっていた熊さんだが、真夜中に何かが見えたと大騒ぎ。こんなことだろうと、旦那が自ら三番蔵 を覗いてみると、小柳繻子の帯と竜門の羽織が相撲を取っている。そうかと思うと、箱から菅原道真の掛け軸が勝手に出てきて、旦那に向かって「持ち主に利上 げせよと伝えよ、どうやらまた流されそうだ」というサゲ。
(http://rakugoneta.blog101.fc2.com/blog-entry-24.htmlより転載)
今回の「質屋蔵」という噺。いくつかのエピソードが続いて噺が進んでいく。並の噺家なら途中でダレるところだが、歌丸師の場合それがないのは、まるで川の流れにような語りに聴く者が乗っかってしまうからだろう。とくに奇抜なクスグリあるわけでもなく、とくに剽軽なオーバーアクションがあるわけでもなく、淡々と噺は進んでいくのだが、いつの間にか噺の笑いの渦に巻き込まれてしまう。ただ終盤、番頭と熊五郎が三番蔵に入り着物と羽織が相撲を取っている場面、菅原道真が掛け軸から飛び出してくる場面で鳴り物が入る。唯一賑やかな芝居仕立てになるのだが、ちょっとこれは意外だった。