笠碁(かさご)
●碁敵の旦那二人、今日は待ったなしでやることにしよう、よし分かった、と。
初めは快調に指していたが、ちょいと間違えたので今のはなしにしよう、などと待ったの口実を並べるが、認めてくれない。
腹いせに、三年前の借金の話を持ち出して、互いに感情的になり「出て行け」「二度と来るか」と、とうとう喧嘩別れ。
三日ほど経った雨の日、二人とも碁を打ちたくて仕方がない。ヤツの所に煙草入れを忘れたので取りに行くと言い訳をすると、傘は使っちゃだめだとカミさんに止められ、仕方なく、富士登山の笠を被って出掛けた。
相手宅に着くなり「煙草入れを取りに来た、こんな家に置いとくとへぼになるから」
「なに、どっちがへぼか勝負するか」
「おう受けてやろう」
待ちに待った碁盤を挟んだ二人。
「あれ、碁盤の上に雨が漏ってるぞ」
「ありゃ、あんた、笠かぶったままだよ」
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-63.html より転載)
1. 柳家花緑『笠碁』
米団治との二人会、タクシーの運転手に言われて衝撃を受けたセリフといったことがマクラ。
年寄り二人の話という意味ではその雰囲気は出ていないが、はっきり言ってそんなことはどうでもいい。
前半では、「待った」を言い出す男が引き合いに出す話が「昔の借金」ではなく、全く別の話になっている。
また、それがおもしろい。
後半では、二者の心理がコミカルな動きの中に描写される(やや誇張しているというきらいはあるにしても)。
そして、サゲ。
通常の笠をかぶっていたではなく、噺の展開から生じたものとなっていた。
なお、一見無関係と思えたマクラが全て噺に関連つけられていた。
(http://kamigatarakugo-and-art.at.webry.info/201110/article_6.htmlより転載)