薮入り(やぶいり)
●奉公に出て三年が経ち、初めての宿りの息子を待つ熊さんは、うれしくて寝付けない。
息子が好きだった納豆を買っておけ、刺し身は中とろを二人前、鰻も用意しろと、一晩中騒いで、朝五時には玄関前を掃き掃除。
息子が帰って来たら、お父っつあん!おお息子よ!と抱き合うつもりでいたら、両手をついて「めっきりお寒くなりまして」と挨拶されて、すっかり調子を外してしまった。
まずは風呂に行って身体をきれいにして来いと送り出して、置いて行った財布をふと覗くと、五円札の大金が小さく折り畳まれて三枚も入っていた。奉公人の小遣いにしては多すぎる、よもや盗んだんじゃないかと、風呂から戻った息子をいきなりどやしつける。
息子は、泣きながら説明する。
「ペストが流行るからと鼠を捕って交番に届けて懸賞に当たったんです」
「そうか、うまくやったな、主人大事にしろよ、チュー(忠)のおかげだから」
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-92.html より転載)
「藪入り」と云えば、何と云っても、「真田小僧」や「居酒屋」や「孝行糖」や「金明竹」等々、子供や与太郎が出て来る噺を得意にしていた、先代の三代目 金馬さんです。私は子供の頃に、テレビで金馬さんを拝見した事がございますが、当時はまだ、ビデオ・テープが貴重品であり、何度も使い回しされていたので、フィルムで撮影した映像しか残っていません。この映像は、唯一現存する金馬さんの高座だと思います。
・・・金馬さんがこのように、台を前にして語るのは、お好きだった釣りの帰りに、千葉の佐原で電車にぶつかってしまい足を悪くして、正座ができなくなってしまったからです。
(http://blogs.yahoo.co.jp/yacup/62128504.html より転載)
CDマガジン「昭和の名人 決定版」にて