※「弥次郎」は収録されていません。
弥次郎(やじろう)
●うそつき弥次郎と異名をとるホラ吹き男。久しぶりに隠居の家にやってくると、さっそく吹きはじめた。
一年ばかり北海道に行っていたが、あまり寒いので、あちらでは凍ったお茶をかじっている。雨も凍って降るので、一本二本と数え、雨払いの棒を持って外出する。「おはよう」の挨拶まで凍って、それを一本いくらで買い、溶かして旅館の目覚まし用に使う……
次から次に言いたい放題。
火事が凍ったのを見て、見世物にしようと買い取り、牛方と牛五、六頭を雇って運ばせ、奥州南部へ。山中で火事が溶け、牛が丸焼け。水をかけても消えないから、これが本当の焼け牛に水。牛方が怒って追いかけてくるので、慌てて逃げだし、気がつくととっぷり日が暮れ、灯が見えたので近づくと山賊のアジト。山賊と大立ち回りになり、三間四方の大岩を小脇に抱え……「おい、三間四方の岩が、小脇に抱えられるかい?」「真ん中がくびれたひょうたん岩」「ふざけちゃいけない」岩をちぎっては投げ。「岩がちぎれるかい?」「できたてで柔らかい」
山賊を追っ払って、安心して眠りこけると山鳴りのような音。目を覚ましてみると大猪。逃げだして杉の木にかけ登ると、先客がいて、これが天狗。上に天狗、下に猪で進退極まった。猪が鼻面で木の根を掘りはじめ、グラグラ揺れる。そこで、ヒラリと猪の背中に飛び下りた。振り落とそうと跳ね回るので、股ぐらをさぐると、大きな金玉。押しいただいてギュッと握りつぶすと引っくり返ったので、止めを刺そうと腹を裂くと、中から子猪が十六匹。シシの十六。「馬鹿馬鹿しいや。おまえ、どこを握って殺した」「金玉で」「金玉ならオスだろう。オスの腹から子供が出るかい」「そこが畜生の浅ましさ」「冗談言っちゃいけねえ」
(http://senjiyose.cocolog-nifty.com/fullface/2005/05/post_ad4d.htmlより転載)
入船亭扇橋師匠の「嘘つき弥次郎」気に入って、ずっと聞いている。リズムがいい、音楽を聞いているみたい。おかげで、「弥次郎」のウソの話がよくわかってきた。今までは、なんとなく、通り過ぎていった話だったけれど・・・
(http://blog.goo.ne.jp/funwari-time/e/90eff4daa5b382d6fac91a061ce82f8eより転載)
弥次郎(入船亭扇橋)
ほら吹きの男が旦那の前で吹き始めた。北海道へ行っていたが、寒くて何でも凍る。挨拶、小便はもちろん火事まで凍る。ある時は武者修行に恐山に行ったが、山賊に取り囲まれたときは石をちぎって投げてやっつけ、大猪に襲われたときは竹の上に逃げて、その枝が折れた音を鉄砲の音と猪が勘違いして気絶した間に睾丸引っ張り殺して腹を割くと十六頭の子猪が出てきたと嘘ばっかり。さらには、猪をやっつけたことを村の人に感謝され、庄屋の娘に惚れられた。女房にしてくれと言われたので紀州の貧窮山困窮寺へ逃げ込み、水瓶の中に隠れていた。娘が後を追って日高川の渡し場まで来たが船が出ないので、怒って川へ飛び込み一尺ばかりの蛇になって川を渡り、寺まで来て水瓶んお周りを七巻き半巻いたが、水瓶にナメクジがべっとりついていたので、ヘビがとけてしまった。頃合いを見て水瓶から出た姿はいい男で見せたかった。「そん時も武者修行かい」「いえ、安珍という山伏で」「どおりで、ほらを吹きとおした」
マクラは嘘について。落ち着いた穏やかな語り口だ。やや一本調子に聞こえるが、枯れた芸で、聞き手を選ぶ。いつもながら、しっかりとおやりになって充実感がある。後進に受け継いでもらいたい。
(http://yunomi.seesaa.net/article/6111341.htmlより転載)
落語家の入船亭扇橋さん死去
2015年7月11日16時00分
巧みな話術と奥行きのある語り口で人気を集めた、落語家の入船亭扇橋さんが10日、呼吸不全のため亡くなりました。84歳でした。
入船亭扇橋さんは、東京都で生まれ、昭和32年に26歳で3代目の桂三木助に弟子入りして落語家になりました。桂三木助が亡くなったあとは、5代目柳家小さん門下として昭和45年に真打ちに昇進し、9代目入船亭扇橋を襲名しました。
扇橋さんは「芝浜」や「文七元結」、それに「鰍沢」などの古典落語を得意とし、巧みな話術と奥行きのある語り口で人気を集めました。
昭和57年には文化庁芸術祭の最優秀賞を受賞したほか、NHKラジオ第一放送の公開演芸番組「真打ち競演」などにも出演し、古典落語の魅力を多くの人に伝えました。
落語協会によりますと、扇橋さんは脳梗塞のため、4年前から入院していたということですが、10日に呼吸不全のため亡くなりました。
(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150711/k10010147381000.htmlより転載)
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