夏の医者(なつのいしゃ)
●暑い夏…。
鹿島村の勘太もダウンしたのか、ご飯を茶碗に七、八杯しか食べることが出来ない。「もう歳だから」と息子が心配していると、見舞いに来たおじさんが「隣の一本松村の玄伯先生に往診してもらえば」と言う。それを聞いた息子はおじさんに留守を頼み、ばっちょう笠に襦袢一枚、山すそを回って六里の道を呼びに行った。汗だくになって訪ねてみると、玄白先生は畑で草取りの真っ最中。早速頼み込み、息子が薬籠を背負って二人で村を出発した。「山越えのほうが近道だべ」 先生がそう言うので、二人で山の中をテクテク。山頂に着いたときには二人とも汗びっしょりになっていた。そこでしばらく休憩し、さぁでかけよう…とした所で、なぜかあたりが真っ暗になった。周囲はなぜか温かい、はておかしいと考えて…。
「こりゃいかねえ。この山には、年古く住むウワバミがいるてえことは聞いちゃいたが、こりゃ、飲まれたかな?」
「どうするだ、先生」
「どうするだっちって、こうしていると、じわじわ溶けていくべえ」
うっかり脇差を忘れてしまい、腹を裂いて出ることもできない。どうしようかと考えている先生の頭に、あるひらめきが舞い降りた。息子に預けた薬籠を渡してもらい、中から大黄の粉末を取り出すと、ウワバミの腹の中へパラパラ…。『初体験』の大黄に、ウワバミは七転八倒…ドターンバターン!
「薬が効いてきたな。向こうに灯が見えるべえ、あれが尻の穴だ」
ようやく二人は下されて、草の中に放り出された。転がるように山を下り、先生、さっそく診察すると、ただの食あたりとわかった。
「なんぞ、えかく食ったじゃねえけ?」
「あ、そうだ。チシャの胡麻よごし食いました。とっつぁま、えかく好物だで」
「それはいかねえ。夏のチシャは腹へ障(さわ)ることあるだで」
薬を調合しようとすると、薬籠はうわばみの腹の中に忘れてきてない。困った先生、もう一度飲まれて取ってこようと、再び山の上へ登っていく。
一方…こちらは山頂のウワバミさん。下剤のせいですっかりグロッキーになってしまい、松の大木に首をダランと掛けてあえいでいた。「あんたに飲まれた医者だがな、腹ん中へ忘れ物をしたで、もういっぺん飲んでもれえてえがな」
ウワバミは首を横に振っていやいや。
「もういやだ。夏の医者は腹へ障る」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%8F%E3%81%AE%E5%8C%BB%E8%80%85より転載)
落語 「夏の医者」 三遊亭圓生を聞いた。面白かった。最初はえらくマイペースな医者だなと思った。医者は草むしりをしていたんだが、「患者がいるからすぐに来てくれ」と村人が来ても 「草むしりもう少しで終わるからそこで煙草でも吸って待ってて。」とか 「ちょっと着替えてくるから待ってて。」とかいうからだ。患者の方も、ごはんが5、6杯しか食べられなくなったとかいうものだからのんびりしていたのだろうが。
(http://guwsoz4.blog123.fc2.com/blog-entry-1219.htmlより転載)
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時折見せる反骨精神、妥協なき言葉へのこだわり
六代目圓生 つくづく名人だと思います
(YouTubeコメントより転載)