子別れ・中(こわかれ)
●…その晩、相方は若い時熱を上げた品川の馴染みの妓であった。その奇遇を喜び、焼けぼっくいに火がついて、楽しく遊んだ。翌朝妓は熊五郎を離さない。とうとう4日も居続けてしまい、有り金全部使い切ってしまった。
家に帰って女房に言い訳をするが、品川の妓とのノロケ話を平気でするので、女房はたまらず亀坊を連れて家を出て行ってしまった。
一人になった熊五郎はこれ幸いと、妓を家に入れて暮らし始めたが、「手にとるなやはり野に置けレンゲ草」で、朝寝、昼寝、夜寝をして、家事一切出来ないだらしない女であった。その上、長屋のトイレに行くのもめんどくさいと「流しで 、したいょぅ」と言いだす始末。朝も食べずに出掛ける熊五郎は別れ話をしようと思ったら、女の方で先に居なくなった。
初めて目が覚めた熊五郎、「前の女房は過ぎたる良い女だった。それに亀坊も大きくなっただろうな」と思うようになった。これ以来、酒はプッツリ止めて3年間しっかり精を出して働いた。元々腕が立つので、お得意も戻ってきて人の頭に立つようになっていた。
(http://ginjo.fc2web.com/106kowakare/kowakasugai.htmより転載)
音声のみでお楽しみ下さい。いわゆる「子別れ」の中です。