火焔太鼓(かえんだいこ)
●道具屋の主人は商売下手。「この箪笥はいい箪笥だね」というお客に「いい箪笥です。もう6年もうちにあるんです」と売れていないことを暴露しちゃったり、そうかと思うと自分で使っている火鉢を売ってしまって、寒くて売った先にお邪魔して暖まってくる始末。
そんな主人がきたない太鼓を市で買ってくた。女房はただ古いだけのボロ太鼓だと言いたい放題。そうは言っても売るしかないので、小僧にはたかせる。小僧がはたかずに叩いていたら、通りかかったお上に聞こえて、家来が店にやってくる。失礼なことをして怒られるのかとびくびくして主人が応対していると、「大鼓を屋敷に持参せよ、殿様が買い上げるかもしれない」とのこと。
ほら売れると女房に報告すると、女房は「音だけ聴いて持ってこいと言っても、あんなきたない大鼓と分かったら、ただでは帰って来れないよ」と脅かされ、「一分で買ったと正直に言って、そのまま一分で売るように」と約束させられる。
屋敷に行ってお上に大鼓を見せると気に入って買うという。家来から「いくらで売るか。お上はたいそうお気に入りだから、値を手一杯言ってみろ。」と言われた道具屋は、両手をひろげ十万両と大きく出て、「いくらでも下げるから値切ってくれ」と頼りないことを言う。
結局三百両で買い上げられ、道具屋がなぜあんなきたない大鼓が三百両にもなるのかと聞くと、火焔太鼓という世の名宝だという。
慌てて店に戻ると、その慌てっぷりに女房は汚い太鼓を怒られて、侍に追いかけられていると思い、隠れろと言う。いや、そうじゃなくて三百両で売れた事を話し、五十両ずつ積み上げると女房も大興奮。
調子よく「これからは音の出る物に限るね」という女房に、主人が「俺は今度は半鐘を買って来るんだ」というと、女房曰く「いけないよ半鐘は、おじゃんになるから」というサゲ。
(http://rakugoneta.blog101.fc2.com/blog-entry-9.html より転載)
白酒『火焔太鼓』 (18:44-19:16)
マクラは、自主興行である「白酒ひとり」の会場(内幸町ホール)でかけたBGMを巡るJASRACとの戦い(?)について。ブログの内容が、ある意味で犯人(?)ということだ。詳しく書くと、また白酒を困らせることにもなりかねないので、この位で。ともかく笑った。甚兵衛さんがこんなに可愛い『火焔太鼓』も珍しい。この人のキャラクターによる可笑しさに、独特のクスグリなども違和感なく融和して、笑いながら感心し、あっと言う間に終わった、そんな印象。たとえば、太鼓の音を駕籠の中で聞いた殿様の命で侍が道具屋を訪れた際、「叱られる!」と勘違いした甚兵衛さんが太鼓を叩いた定吉を紹介する時の、「橋の下で拾ったんです」は可笑しかった。会場には、私も含めて、子供の頃に悪さをすると親からそんなことを言われたような年齢層のお客さんが多いと思われるので、結構ハマったくすぐりだったと思う。また、太鼓の代金として侍から三百両を五十両づつ受け取る際の甚兵衛さんの意味不明なことを言いながらのうろたえぶりなども含め、しっかり白酒ならではの噺に仕上がっている。文句なく年間のマイベスト十席候補としたい。
(http://kogotokoubei.blog39.fc2.com/?no=346より転載)