お化け長屋(おばけながや)
●長屋に一軒の空き家があり、みんなで物置代りに使おうということで、誰かが借りに来たら、一番古株の杢兵衛さんが差配になりすまして怖い話をして追い返すことにした。
話の筋はこうだ。あの空き屋には以前後家さんが一人で住んでいたが、ある夜、強盗が押し入って胸を刺されて、部屋は一面血の海となり、後家さんは殺されてしまった。それ以来、新しい借り主が住み込むと、三日目の雨の夜に化けて出て来るのだと。
一人目は気弱そうな男で、怪談話をして怖がらせたところで冷たい濡れ雑巾で頬をなでると、驚いて一尺も飛び上がり、財布を落として逃げて行った。うまくいったと喜んで、二人目にも同じように怪談話をするが、威勢のいい職人でちっとも怖がらない。逆に面白がって、店賃が只ならすぐに引っ越して来ると言い残して帰っちまった。
「ところで財布を落さなかったかい」
「あれれ、前の財布を持って行っちゃった」
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-87.htmlより転載)
「立川談志 ひとり会 落語CD全集 第二十七集『お化け長屋』『文七元結』」を聴く。「お化け長屋」は昭和45年7月21日の「第39回ひとり会」、「文七元結」は昭和49年3月22日の「第65回ひとり会」からの収録。いずれもマクラでは、ひと世代前の「よき時代への憧憬」とも言うべき言葉遣いがみられる。
「お化け長屋」は、上方では笑福亭三喬師がやっておもしろい「借家怪談」と同様に、ヤタケタな兄さんが賃貸交渉成立と宣言して直前の来訪者が忘れていった財布を持ち帰ってしまうところで切っている。
三喬版は随分とヤタケタ振りが激しい傍若無人で、その分差配の杢兵衛の狼狽、困りがおかしいのだが、談志師のは洒落っ気も愛嬌もある兄さんで、杢兵衛に同情を寄せられない。むしろ快活な江戸っ子気質に分を与えたくなる。
(http://blog.livedoor.jp/kogakudo/archives/51804164.htmlより転載)