だくだく(だくだく)
●「だくだく」の八っつぁん、店賃を1年と12ヶ月溜めて、大家に出てって やると、家財をバッタに売って、空きだなに移る。何もないので、模造紙を貼り、絵描きの先生を呼んできて、家財道具を書いてもらって、「そのつもり」になる。床の間、山水でなく字がいい。「尖閣諸島は日本の領土」や「鬼畜米英」じゃなくて「落語研究会 TBS」。1億3千万円が見えている金庫、上には小粋な時計、時間は3時に、見るたびお菓子になる。箪笥は総桐、奥光りで「ピカッ」、二三枚着物が出ている。ラジオ、天気予報をやっていて、吹き出しを描いて「台風接近中」「今だけ」。羊羹は厚く楊枝を添えて、欅の長火鉢、おでんが煮えている、玉子竹輪にがんも、鉄瓶から湯気。座敷には三毛猫、窓からは富士山、奈良の大仏、札幌の時計台、紅葉している。長押には槍を、描いてもらって、完成。「どうです、羊羹でも」と言われて、絵描きは帰る。
その夜、間抜けな泥棒、近視で、乱視で、メガネ嫌いが、この家に入る。箪笥に手をかけて、突き指し、みんな絵と気付く。そっちがあるつもりなら、盗ったつもりになろうと、風呂敷を広げたつもり、帯源の帯、一斗の酒樽、藤村の羊羹、ペルシャ猫を風呂敷に包んで、持ち上げたつもりになる。起きた八っつぁん、「お前だけ本物か」といわれ、投げ縄、吹き矢で攻撃したつもりになると、泥棒も懐のけむり玉を破裂させたつもりとなり、長押の槍を取って、泥棒の脇腹めがけてブスリと突いたつもり…。
「白酒は、いま一番ホットだ」と、最近『現代落語の基礎知識』(集英社)と いう本を出した広瀬和生さんが言っている。友人がくれた白酒・広瀬和生対 談が載っている雑誌のコピーを読んで知った。たしかに白酒は、いい。「だ くだく」も充実、白酒の体躯のように、はちきれんばかりだった。
この会は収録があるのでこれでもメイクをした、と白酒、アナログとデジタ ルではあまり変わらないが、ハイ・ビジョンだと変わる。見えすぎて、よろしくない。けっこう歳なんだとわかる。最近は3Dが騒がしい、だから何だっていうんだ。寄席中継が飛び出て来る。メガネが要るのが、まだまだだ。そんなのの、上を行くのが落語。素晴らしい。第一に、お客様の頭の中で、ご通家だと、一瞬で風景が広がる。第二に、偉い人が出てこない。先生でも、いい加減な先生だ。それが、人に勇気を与える。みんな同じなんだと思わせる。
(http://kbaba.asablo.jp/blog/2010/11/03/5465158より転載)
今回から新しく始まった会だそうですね、「セゾン ド 白酒」(笑)。
一席目は、「成城」の高級感を洒落のめすマクラから、新しい会ということで縁起をかついで泥棒の噺「だくだく」。もう飽きるくらい何度も聴いてるのに、今日は呼吸困難になりそうなくらい笑ったなあ~。なにが違うんだろう。お客さんの雰囲気も良かったしな。若い人と女性が多かった気がする。
ちなみに掛け軸は何て書くかいろいろ迷って「原発反対」→「金融不安」(だっけ?)からの「小三治万歳」。
(http://waccacafe.jugem.jp/?eid=506より転載)
白酒の二席。
「だくだく」。泥棒の「つもり」が、八っつぁんの「つもり」より、微妙に高級になるところが可笑しい。たとえば、茶箪笥の上に描いた酒びんは焼酎から高級プランデーに、床であくびしている猫は三毛猫からペルシャ猫に、という具合。
(http://rakukyotabi.seesaa.net/article/167100155.htmlより転載)