目黒のさんま (めぐろのさんま)
●秋の遠乗りで、中目黒に出掛けた大名が、百姓家から立ち上る煙に、あの匂いは何かと尋ねる。さんまという下衆魚で下衆下民が食す魚だと答えるが、苦しゅうない持参致せと。
さんまに粗塩をかけて、農家の熾火の中に放り込んで丸ごと焼いたさんまで、荒っぽい料理だが、野駆けで空腹のところへ脂の乗った走りのさんまだから、不味いはずがない。一箸付けては代りを持て、一箸付けては代りを持てと五、六本食べてしまった。
目黒で食べたさんまの味が忘れられないが、普段の食事では出されることはない。
あるとき、親戚筋から招待された折り、さんまを希望した。料理方が早馬で魚河岸に走り、房州のさんまを仕込んで、三枚におろし、油が強いからと蒸して、粉を入れてつみれにし、椀ものにしたてて更に餡掛にした。
殿様が一口食べると不味い。このさんまは何処の産か? 房州だと聞くと、
「それがいかん、さんまは目黒に限る」
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-44.html より転載)
たい平「あのう、司会も緻密でしたけども、落語もやっぱり円楽師匠は緻密でして、安田生命ホールでの落語会の出来事なんですが、『目黒のさんま』という落語を演じてたとき、殿様が、狩りにね、野掛けに出掛けたときに、庶民が食べるさんまを食べて、初めて食べて美味いっていう、その、美味いっていうシーンのところでですね、『いやぁ、こんな美味いものがあるのか』というのを、『こんな不味いものがあるのか』、って言ってしまって、お客さんも楽屋も、これからどうするんだと思ったときに、普段、殿様って1匹しか食べませんよね。なのに、何匹も食べ続けてですね(笑)、『いやぁ、何匹も食べてると、美味いもんがあるねぇ。』(笑)って言いながら、最後は強引に、『目黒のさんま』、もとに戻したという。」
(http://plaza.rakuten.co.jp/satoushin/diary/200911090000より転載)