猫の災難(ねこのさいなん)
●湯上がりに、一杯飲みたいなと考えていた熊五郎の前を、隣の女将さん、が大きな鯛の骨をを捨てに行くと、熊五郎が、声を掛けた。
その大きな鯛は、猫が病気なので、見舞いにもらったので、頭と骨だけ残ったから、捨てに行くと聞いて、熊五郎が猫にあやかりたいねぇ、その骨を良かったらもらいたいけどと言うと、隣の女将さんがこんなものどうするんだい?、熊五郎はちょっと焼いてお湯を掛けて醤油を入れて飲むとうまいんだと言って、その鯛の骨をもらった。
すり鉢を上からかぶせておくと頭と尾っぽが出て鯛があるように見える。そこへ、友達の八五郎が訪ねてきて一杯やりたいなぁと話し合っていると、すり鉢の鯛を見て、立派な鯛じゃねぇか、それで飲もう、酒は買ってくると言って、八五郎が出て行く。
熊五郎も、今更、これは骨だけとは、言えないでいるうちに、八五郎が酒を買いに言ったので、なにか言い訳をしなきゃと考えて、しかたなく、隣の猫に取られたことにする。
八五郎が、酒を持ってきたら、その話をして、隣には、いつも世話になっているからと、言って、酒だけ飲もうと言い出す。
八五郎は、せっかく鯛で飲もうと思ったから、どうしても鯛を買ってくると出かけた。
熊五郎が、お燗をつけながら、味見をするうちに、八五郎が買ってきた酒を飲んでしまう気が付いた熊五郎は、また言い訳をしなければならないので、隣の猫が徳利を倒したことにして、はちまきを締めて、喧嘩支度で八五郎の帰りを待っていたが、酔っぱらって寝てしまう。
そこへ八五郎が帰ってきて話を聞いて怒り出す。そのうちに熊五郎が、酔っぱらっていることに気が付いて、お前が飲んだなと言うと、熊五郎は、大声で隣の猫が蹴飛ばしたんだ、隣の猫のところへ行ってくれと言い出す。
そこへ、隣の女将さんが顔を出して、うちの猫は寝ているんだよ、さっき熊さんに鯛の骨をあげたのに、何で悪く言われなきゃならないと、怒り出す。
様子がしれた八五郎は、この野郎!お前猫のおあまりをもらったな、この俺に隣の猫のところへ何しに行かせるつもりだったんだと言うと、熊五郎が、だからよく謝っておいてくんねぇ、
(http://www12.plala.or.jp/yose/nekonosainan.html より転載)
「一人酒盛」に似た雰囲気のある滑稽噺で、笑い所も多い。ただ、熊がひとりごちている場面が多いため、演じるのは大変そうだ。その点、権太楼師匠は見事に熊を演じている。
言い訳を考えるときの、「猫に悪いなァ~ でも、それしかないか」という台詞の口調で、熊という人物のだらしない性格を観客に伝える。そして、次第に酔っていく熊の変貌ぶりは、絶品としか言うことはない。権太楼師匠自身が「酒飲み顔」だから、熊と同化していったような雰囲気があるのだ。
この噺、「聴いたことがある」だけで「観る」のは初めてだと思うが、視覚的にも楽しめるものなのだということが分かった。