錦の袈裟 (にしきのけさ)
●町内の若者たちが吉原へ遊びに行くについて相談をした。
「質屋に何枚か質流れの錦の布があり、『なにかの時は使っていい』と番頭に言われているので、吉原へ乗り込んでそれを褌にして裸で総踊りをしよう」と決める。
ところが、数が一枚足りない。仕方なく、与太郎には自分で工面させることにする。
与太郎は家へ帰って、女房に話す。
「行ってもいいが、うちに錦はないよ。じゃ、檀那寺の住職にお願いしておいで。『褌にする』とは言えないから『親類の娘に狐が憑いて困っております。和尚さんの錦の袈裟をかけると狐が落ちる、と聞いておりますので、お貸し願います』と言って借りてきなさい」
知恵を授けられた与太郎、寺へやってきてなんとか口上をして、一番いいのを借りることができたが、和尚さんから「明日、法事があって、掛ける袈裟じゃによって、朝早く返してもらいたい」と念を押される。
承知して帰宅。褌にして締めてみると、前に輪や房がぶら下がり、何とも珍しい形になる。
いよいよ、みんなで吉原に繰り込んで、錦の褌一本の総踊りとなる。女たちに与太郎だけがえらい評判。
「あの方はボーッとしているようだが、一座の殿様だよ。高貴の方の証拠は輪と房。
小用を足すのに輪に引っ掛けて、そして、房で滴を払うのよ」
「他の人は家来ね。じゃ、殿様だけ大事にしましょうね」
てんで、与太郎が一人でもてた。
翌朝、与太郎がなかなか起きてこないので連中が起こしに行くと、まだ女と寝ている。
与太郎「みんなが呼びにきたから帰るよ」
女「いいえ、主は今朝は返しません」
与太郎「袈裟は返さない…? ああ、お寺をしくじる」
(http://www.dab.hi-ho.ne.jp/ensou/furrok/dijest2.html#dig29 より転載)
あらすじだけでは分からない、隣町に負けない遊びの趣向を考えるあたり、与太郎が恐る恐る女房に吉原に行く話しを持ち出す話、狐憑きには古いほうがいいというのに新しい方がいいというあたり、そして、大引け前のやり取りなど、「くすぐり」の宝庫である。
下げまでは単純な噺であるが、この途中の多数の登場人物のやり取りが面白い。その点、声色を変えてラジオ向けに演じ分ける金馬師匠のこの作品は、彼にぴったりの噺である。
(http://homepage2.nifty.com/Curious-G/starthp/subpage80181.html より転載)
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