三軒長屋(さんげんながや)
●三軒長屋の両端に鳶の頭と剣術の楠木先生、真ん中には質屋の妾が住んでいる。頭の家では若い者が喧嘩騒ぎ、道場は稽古で喧しい。
質屋の旦那が泊まりに来た夜も、壁から出刃の先が飛出し、剣術で壁が揺れ「こんな家は出たい」と嘆く妾に、ここは家質になっており、あと数日で自分の物になるから、奴らを追い出すと告げ、女中がこれを漏らして、頭の知る所となった。頭が一計を案じた。
まず、楠木先生が「今度引越すことにしたのだが、金が無いから千本試合をやるので、血を見たり騒々しくなる」と告げると、旦那が「金を用立てるから」と止めさせ「たかだか五十両で厄介払ができた」と喜ぶ。
次に、頭が「今度引越すのだが、金が無いから花会をやるので、怪我人が出たり迷惑をかける」と告げた。これも旦那が五十両を渡して止めさせ、何処に引越すのか問うと、
「へい、楠木先生があっしのところへ、あっしが楠木先生がのところへ引越しやす」
○家質(かじち)とは、家屋敷を抵当に入れて借金をすること。
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-144.html より転載)
談志師匠にとっても今日の会は何かしら特別な感慨があったのではないか。大ネタをかけてみたい、高座のなかで体力気力が甦るものか試してみたい、談春志らくを前に尻上がりに調子を上げていく「三軒長屋」を……。理性と欲望が交錯し、談志は「三軒長屋」に入った。鳶の頭と、お妾さん、剣術道場からなる三軒長屋のドタバタを描くこの噺、多彩な人物、場面を描き分ける楽しみで引っ張っていく、体力も息の長い集中力も必要とするネタだ。喧嘩やヤットウのシーンもにぎやかで盛大に演じてこその噺である。この日の談志には、きつい坂道だった。お妾さんを囲っている大家が両隣の店立てを決心したところで、談志は噺を切り、「今日のようないいお客さんに申し訳ない。この次は」と何度か繰り返した。そして、レストランの小噺をいくつか演り(今日の小噺集は質量ともにとても充実していた)、いつものように丁寧にお辞儀をしてみせたのである。
(http://homepage2.nifty.com/Curious-G/starthp/subpage716.html より転載)
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