御神酒徳利 / 占い八百屋(おみきどっくり / うらないやおや)
●八百屋が御用聞きに来たが、女中が大掃除で忙しいので存在な口をきいたのに腹を立て、そばにあった徳利を水瓶の中に隠してしまった。それが家宝の徳利だったので大騒ぎになると、八百屋の方でも今更自分が隠したとは言えない。占いが出来ると嘘を言って、「女中のふるまいに神様が腹を立て、水瓶の中に隠したのだ」と言って徳利を見つけた。泊まり合わせた鴻池の番頭がこれを聞いて、お嬢様の病気を見てくれるよう頼み、八百屋は大阪まで出掛けることになる。
神奈川まで来ると、客の財布が無くなり、宿の主人に疑いが掛かって困っているという。
さっそく八百屋の先生が占いを頼まれたものの、これは占える訳もなく、夜逃げの準備をして夜が更けるのを待っている。すると、財布を盗んだ女中が、江戸から占いの名人が来たと聞いて、自首して来た。八百屋は女中を助け、神様がお隠しになったのだということにして、財布を見付け出した。
さあ翌日になると、「紛失したものがあるから占ってくれ」という近所の人が押し寄せて、宿の表まで行列が出来る始末。仕方なく八百屋先生を起こしに行った番頭があわてて戻ってきた。
「大変です。今度は先生が紛失しました」
(http://meisakurakugo.web.fc2.com/rakugo/03-u/0348uranaiyaoya.htmより転載)
音声のみでお楽しみ下さい。外題は録音時のものです。
この噺には二つの系統あり、権太楼が演じているのは三代目柳家小さんが大阪から移した「占い八百屋」と呼ばれる型のもの。もう一方の系統である六代目三遊亭圓生が演じたものには八百屋は登場せず、年に一度の大掃除の日に、台所に転がっている御神酒徳利を見つけた店の番頭がしまう所が無いからと、徳利を水がめの中に入れておいたのを忘れて、それを言い出せずに占いで行方を捜すという内容である。どちらかと言うと圓生型のものはじっくり聞かせる人情噺風で、権太楼が演じる型は滑稽味あふれる笑いの多い一席と言える。
(https://www.dplats.jp/kura/asp/itemdetail/rakugo-dl-00170s/より転載)
子別れ・中(こわかれ)
●…その晩、相方は若い時熱を上げた品川の馴染みの妓であった。その奇遇を喜び、焼けぼっくいに火がついて、楽しく遊んだ。翌朝妓は熊五郎を離さない。とうとう4日も居続けてしまい、有り金全部使い切ってしまった。
家に帰って女房に言い訳をするが、品川の妓とのノロケ話を平気でするので、女房はたまらず亀坊を連れて家を出て行ってしまった。
一人になった熊五郎はこれ幸いと、妓を家に入れて暮らし始めたが、「手にとるなやはり野に置けレンゲ草」で、朝寝、昼寝、夜寝をして、家事一切出来ないだらしない女であった。その上、長屋のトイレに行くのもめんどくさいと「流しで 、したいょぅ」と言いだす始末。朝も食べずに出掛ける熊五郎は別れ話をしようと思ったら、女の方で先に居なくなった。
初めて目が覚めた熊五郎、「前の女房は過ぎたる良い女だった。それに亀坊も大きくなっただろうな」と思うようになった。これ以来、酒はプッツリ止めて3年間しっかり精を出して働いた。元々腕が立つので、お得意も戻ってきて人の頭に立つようになっていた。
(http://ginjo.fc2web.com/106kowakare/kowakasugai.htmより転載)
音声のみでお楽しみ下さい。いわゆる「子別れ」の中です。
「なごやか寄席」シリーズ 四代目 柳家小せん きゃいのう/お血脈
きゃいのう(きゃいのう)
●名優・市川団十郎の弟子で團五兵衛と言う役者。持ち前の根性で熱心に舞台を務め続け、念願の人の役を手に入れた。
ところが、いざ出演する段になって床山へ行くと鬘がない。床山の親方に抗議すると、『初日に挨拶に来なかったろ? お陰で鬘の数が分からなかったんだ。お前が悪い!!』と怒られてしまった。
「せっかくの出演なのに…」と泣き出す團五兵衛。気になった親方が事情を聞くと、團五兵衛は泣きながらこう語った。
「自分は、芝居好きが高じて家を飛び出して役者になりました。お陰で勘当されましたが、最初に役が当たったときに実家に手紙を書くと両親は喜んで見に来てくれました。ところが、終幕後両親に会ったら『どこに出たの?』と訊かれてしまったんです」
何の役をやったかと訊くと、それが何と《仮名手本忠臣蔵・五段目山崎街道》の猪の役。それじゃあ分かる訳がない。しばらくたち、また役が回ってきたんで知らせるがまた『どこに出たの?』と訊かれてしまった。やった役が『熊谷次郎直実の馬』だったのだ。
「そんな私にもやっと人間の役が回ってきたんです。うれしくなって、実家に手紙を書きました。【やっと二本の足で歩けます】」
それじゃ赤ん坊だよ…と呆れながらも、團五兵衛のひたむきさに心を打たれた親方は鬘を準備する事を約束。あれこれ探すが、余っていたのは以前余興で力士が芝居をやったときに使った鬘だけだった。
已む無く落花生の殻を新聞紙でくるみ、それを詰め物として鬘に押し込んでやっと準備を整えた。頭を下げる團五兵衛に対し、親方が『台詞があるのか?』と訊いてくる。
「ありますよ。一言、『きゃいのう。』だけですが…」
ぽかんとする親方に、團五兵衛は
「幕が開くと、腰元が三人掃除をしています。そこに乞食がやって来て、それを見つけた腰元が台詞を言うんです。一人目が『むさくるしいわい』、二人目が『とっとと外へ行』、そして私が『きゃいのう。』」
所謂《割り台詞》と言う奴だ。緊張する團五兵衛を励まし、何とか舞台に送り出した。
一息ついた親方に弟子がおずおずと声をかける。
「さっき、親方の吸ったタバコの吸殻が、落花生の殻の中にポト…」
びっくり仰天した親方。慌てて様子を聞くと、團五兵衛の襟元から煙が漏れ出しているんだとか。『消防車と救急車を呼べ!!』と楽屋裏が大騒ぎになる中、舞台ではいよいよ團五兵衛の芝居が始まった。
一人目の腰元が「むさくるしいわい」、二人目が「とっとと外へ行」、そして團五兵衛の番…だが、緊張してなかなか台詞が出てこない。しかもよく見ると、頭からモウモウと煙が立ち上っている。いぶかしがる仲間だが、抓れば思い出すだろうと「とっとと外へ行」と言ったところで團五兵衛のお尻をギュ!!
「ウヒャヒャヒャヒャ、ウーン…熱いのう」
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%8D%E3%82%83%E3%81%84%E3%81%AE%E3%81%86より転載)
私にとって、小せんと云えば四代目なんですが・・・落語は一回も聴いた事がなく、この「きゃいのう」一本の動画しか知りません。あまりにもテレビでお笑いタレントのイメージで売ってしまうと・・・折角ちゃんとした落語が出来るのに・・・もったいないなと思います。
「きゃいのう」と云えば・・・柳家金語楼なんですが・・・本来この演目は、金語楼の師匠の初代 三語楼が芝居噺と云うよりも、茶番として作ったとされています。まあ、談志とて柳家一門だった訳ですから、本来の「武助馬」の音源を残していたりします・・・
(http://blog.livedoor.jp/cupliv/archives/50474204.html#moreより転載)