※「夢金」は収録されていません。
夢金(ゆめきん)
●冬の寒い日のことです。曰くありげな浪人と、いいところのお嬢様が、品川まで行ってくれと船に乗り込んできました。しばらく行くと、浪人が船頭に耳打ちします。
「あの女は、呉服問屋の娘で、さきほど確かめたら、懐に百両もの大金を持っているようだ。どうだ、幸い人も見ていない。船の上で、ばっさり切って、川に沈めて、金を山分けというのは」
とんでもない男です。船頭は、びっくりしつつも、もともと欲深い男です。浪人の話を承諾します。「ただし」と船頭は言います。「船が血で汚れるのは嫌だ。途中に中洲があるから、そこでやりましょう」
船は船頭と浪人、それに何も知らない呉服屋の娘を乗せて、静かに雪が舞う中、進んでいきます。
しばらく行くと、船頭が言ったとおり、中洲が見つかります。浪人は、中洲に飛び移ります。すると、船頭は船を中洲からすーっと離します。「おい、船頭、どういうつもりだ」「なに言ってやがんで。お前みたいな悪党は、どうせお嬢さんを殺した後で、俺っちも殺すつもりだったんだろ。そうはいくか。もうじき潮が満ちてくる。泳ぐなり沈むなり勝手にしやがれってんだい」呉服屋の方では、娘が無事に帰ってきたことで、大喜び。船頭に謝礼を渡したいと言います。船頭は、口ではいらないと言いつつも、やっぱりお金が欲しい。そうこうするうちに、お金の入った袋がびりっと破れて、中から百両もの大金が。やったと思った途端に、股間の痛みで、目が覚めてしまいます。
何が痛いって、おもわず両方の急所を握りしめていたという、強欲は無欲に似たりというお話。
(http://homepage3.nifty.com/~tomikura/rakugo/y.html#YUMEKIN より転載)
三代目三遊亭金馬、六代目三遊亭圓生、さらに古今亭志ん朝や立川談志が得意とした大ネタ。船の上での情景描写がすべて、江戸落語の美学の塊のような噺で、現代では五街道雲助が見事に演じるほか、立川談春の十八番として知られるが、その談春も話芸のテクニックを認めている三三が、見事に冬の情景を描いて見せた。
(http://ent.living.jp/rakugo/244/より転載)
●柳家 三三 「 夢金」
中入り後は欲張りは集めたがり、ケチは出ていくのが嫌なんだというまくらから、額に金と銀が張り付いて取れなくなったのが、鼻のあたりに桂馬を置いたら見事に落ちたとか、どこかで聞いたような話から「百両欲しい~」と夢金へ
(http://kojimomo.blog.jp/archives/51896941.htmlより転載)
三三さんは黒紋付で登場。マクラで新春の初席の話などをひとしきりした後、「今日は冬の噺をやりたいなと思います」「“欲の深い人”というのがいるもので…」と続いたので「え?まさか最初から『夢金』?」と驚いた。
『夢金』といえば、自分には、昨年暮れの談春師が記憶に新しい。談春師の『夢金』は冬の夜の暗さと寒さをキリッと美しく描いて、聴いているうちにその情景につい陶酔してしまうのだが、三三さんのは、描写はきれいだが、談春師よりもう少しだけ面白いほうに寄ってて、ストーリーで楽しませるという感じだった。
(http://d.hatena.ne.jp/turarayuki/20080124/1201168079より転載)