たがや(たがや)
●両国橋の上は花火見物の人でいっぱい。そこへ本所の方から馬上ゆたかに塗り笠の侍。供の侍二人と槍持ちが一人で、花火見物承知で無粋にも橋を渡り始めた。反対の両国広小路の方からやって来た”たが屋”さん。
道具箱と青竹の”たが”を丸めて担いでいたが、人々に押されながら橋の中央まで来たがたまらず落としてしまうと、青竹のたががスルスルと伸びて馬上の殿様の陣笠を跳ね飛ばしてしまった。笠は川の中に落ちて、陣笠の中の土瓶敷きの様なものが残って、鼻から血を出しているので、回りの者が「ケポッ」と笑ったので、殿様カンカンに怒った。
「無礼者なおれ!。屋敷に来い!」、「お屋敷に行ったら首が無いので、親に免じて許して欲しい。」。何度も謝って許しを請うが「ならん!」の一言。たが屋さんけつをまくって、殿様に粋のいい啖呵で毒づく。殿様、我慢が出来ず、供侍に「切り捨て~ぃ」。
ガサガサの赤鰯(サビだらけの刀)で斬りつけるが喧嘩慣れしたたが屋さんに、反対に切り捨ててしまう。次の侍は出来るが、これもたが屋が幸いにも切り捨ててしまう。殿様槍をしごいてたが屋に向かうが、せんだんを切り落とされ、たが屋の踏み込むのが早く、殿様の首を「スパッ」。
中天高く上がった首に花火見物の人々が「たがや~」。
(http://ginjo.fc2web.com/029tagaya/tagaya.htm より転載)
先代の金原亭馬生は、血みどろになって肩で息をしている箍屋を、花火が明々と照らすという凄絶な立ち回りの場面を入れていた。これはいわゆるニンが合った演出で、圓楽は明るく演じている。箍屋の勝利とはなるのだが、原話では最後に首が飛ぶのは箍屋のほうだったという。他の放送で、時間がなくなった圓楽が、途中で噺を切らざるを得なくなり、唐突に「おなじみの血煙たがやの一席でございます。」と下げたことがある。このセンスも面白い。<解説 中村真規>
(https://www.dplats.jp/kura/asp/itemdetail/rakugo-dl-00285/より転載)