千両みかん(せんりょうみかん)
●日本橋のさる大店の若旦那が、病にかかってしまいました。可愛い跡取り息子のこと、両親はたいそう心配します。医者が言うには、なにか思い煩っているのだろうとのこと。ところが両親がわけを尋ねても、若旦那は恥ずかしがって言おうとしません。そこで、昔からの番頭さんが理由を聞き出して欲しいとお願いされます。番頭さんが、聞き出したところ、若旦那は、みかんが食べたいとのこと。みかんに恋煩いというのも、かわった病でございます。お金持ちのお坊ちゃんの考えることと言うのは、我々凡人には想像もつかないようで……。
ともあれ、番頭さんは、若旦那を元気づけようとみかんを買い求めます。ところが、季節は真夏。今とは違い、みかんは冬のものと相場が決まっております。あっちこっちの果物屋、八百屋、はては魚屋に掛け合いますが、夏にみかんなんかありっこありません。途方に暮れていた番頭さんを見かねた魚屋が、神田の多町に万亀というみかん問屋があって、そこになら1つぐらいみかんがあるんじゃないかと教えてくれます。大喜びで駆けつけたところ、確かにみかんがあるにはあったのですが、値段を聞いてびっくり。
1個千両と言われてしまいます。可哀想に、番頭さんは腰を抜かしてしまいました。店に戻って旦那に相談したところ、千両で息子の命が助かるのなら安いものだと言われて、ぽんと千両を出します。これでまた、番頭さんは腰を抜かします。
ともあれ、千両のみかんを買って帰って若旦那に差し出したところ、若旦那はおいしそうにみかんを食べ、見る間に元気を取り戻します。10房あるうち、7つまでを食べ終えた若旦那は、残り3つを差し出し、一つは父親、一つは母親、残り一つは番頭さんにあげると言います。3房のみかんを持った番頭さんは考えました。みかんにはちょうど10房。ということは1房100両。自分は今300両もの大金を手にしている!そう思った番頭さんは、みかんを3房抱えて、そのまま逃げ出しました。
(http://www.koboya.co.jp/toshi14.htm より転載)
彼の傑作はいろいろ云われ特に『芝浜』がいいなんていいますが、叶には談志の生き方からいえばこの『千両みかん』のほうが、あっている気がします。
最後のナンセンスさがイイ。
(http://blogs.yahoo.co.jp/kanauhaya/12470225.htmlより転載)