一人酒盛(ひとりさかもり)
●うまい酒を貰ったから一緒に飲もうと、留さんを呼びつけたのが飲ん兵衛の熊さん。
肴は何にも要らないが、格好がつかないからと、留さんに刺し身を買わせて漬物を出させて、燗の用意までさせた。
ちょっと一口試してみようと口を付けなが「飲み友達は沢山いるが、留さんが一番好きなんだよ、二人でじっくりやろうよ」
「そう言われると嬉しいねぇ、で旨いかい」
「飲んでる時にせっつくんじゃねぇよ、もう一本熱いのを取ってくれ」
しゃべりながら延々と一人で飲み続けた熊さんが気分よく酔って、留さんに何か歌えというが、素面じゃ歌えねぇ。だんだんぞんざいな口になり、終いに留さんを馬鹿呼ばわり。
とうとう留さんが一杯も飲まないうちに酒が無くなってしまった。留さんが怒って飛び出すと、近所のおかみさんが飛び込んで来て、どうしたんだい、喧嘩でもしたのかい。
「留公なら放っときな酒癖が悪いんだから」
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-114.htmlより転載)
いわゆる滑稽噺なのだが、主人公の熊が「イヤな奴」に思えてしまうと笑えない。そこをどう演じるかが鍵なのだが、圓生師匠の演技は素晴らしいものだった。次第に酔っていき、いらない事をべらべらとしゃべっているうちに、ついつい「一人酒盛」になってしまった、という様を見事に表現している。
加えて、飲み食いする演技の巧みなこと!
CD、つまり音声だけで聴いているものだから、「向こう側」では本当に酒を飲んで肴を食べているように思える。さすがの至芸。演技時間は22分程だが、その間、ほとんどが熊の「ひとりしゃべり」だ。それで「もたせる」というのも一つの技巧である。
軽い気持ちで聴いたのだが、その名演ぶりに度肝を抜いたのであった。
(http://d.hatena.ne.jp/Clif/20101103/p1より転載)
CDにて