水屋の富(みずやのとみ)
●え~、今年の夏は何とか、やっとこ、さっとこ、細々ともったようですけども、毎年夏になると、この東京というところでは水不足でもって悩まされまして、え~、どうもこの、今更始まったことじゃないようでしてね--転職を考えていた水屋さん、富に当たり、八百両を手に入れた。水屋という商売柄、責任もあり後任者ができるまでは止めることができない。仕事に出かけようとするが、八百両のことが気になって落ち着かない。あれこれ悩んだ末に、縁の下に金を隠して出かけていく。家の方へ行く人が、どうも怪しく思えて、なかなか仕事へ行けない。やっとの事で振り切って出かけて、帰ってくる。つるべ竿を縁の下に入れて、金に当たる音を聞いて安心する。夜も金を取られる夢を見て睡眠不足。翌日も竿で金を確認して出かけていく。水屋の前に住んでいたのが、やくざの下回り。ここんところ、ついていなくて銭が無くてこまっていた。ふと見ると、水屋が竿を縁の下につっこんで何かを調べているのに気がつき、留守の間に調べてみると銭を見つけ、それを持ってドロン。帰ってきた水屋、銭が盗まれたことに気がつき「あっ、ない。持ってかれちゃった。ははははは~、あ~、これで苦労が無くなった」
(http://yunomi.seesaa.net/article/138321159.htmlより転載)
これがねえ、ネタを割ってしまいますが、かわいそうな噺なんですよ。噺の途中から、あ、これはかわいそうなことになるな、と大方の客には思えてしまうので、聴いているこちらも息苦しい。お金も出来た、早く辞めたいと思いながら辞められない水屋さんが、演者であるさん喬の律儀さともあいまって、リアルに襲ってきます。繰り返しの処理はさすがの一語。この「水屋の富」という噺自体、たびたび聴きたくなる噺ではないかもしれないが、最後、ぽかんとした諦めと安堵の感覚は捨てがたく思いました。で、やっぱわざわざこの噺を聴くなら、さん喬なんじゃないかな、とも。
(http://homepage2.nifty.com/Curious-G/starthp/subpage80118.htmlより転載)