天災(てんさい)
● 喧嘩早くて、母親をも足蹴にしようという短気で乱暴者の八五郎が、ご隠居に諭されて、心学者の紅羅坊名丸の話を聞きにいった。
なる堪忍は誰もする、ならぬ堪忍するが堪忍、堪忍袋を常に身に掛け、破れたら縫い破れたら縫い。喧嘩が好きだといっても相手がいなければ喧嘩にならないだろう。四里四方何もない野原で急な雨でびしょ濡れ、腹は立つだろうが誰と喧嘩をする。
てやんでぇ、こちとら江戸っ子でぃ、職人だベラボウめ威勢がいいんだ、クルッと尻捲くって、天から降った雨じゃしょうがねぇ。
天から降ったものだと思って諦められる、これを天災という、と諭された。
長屋に戻り、別れた女房とひと悶着が済んだばかりの熊五郎の家に行って天災を説く。
人間は神主だ、奈良の神主、駿河の神主。元のカミさんが怒鳴り込んだと思うから腹が立つ、天が怒鳴り込んだと思え、これすなわち天災だ。俺んところは先妻だ。
(http://mengjian.blog104.fc2.com/blog-entry-70.html より転載)
・・・突然、紅羅坊の理屈に説得されるあたりは不自然だけど、もともと八五郎には理屈はどうでもいいことで、家主に「紅羅坊先生の話を聞いて来い」と言われて即座に歩き出す素直さ、いい加減さ、無造作さでもって、覚えたてホヤホヤの説教を自分もかましてやろうという方向に、すっと足が向くのだろう。長屋に帰ってきて、心学をふりかざしたい八五郎と、なんとか口を挟ませないようにしたい長屋の衆との攻防も楽しいかぎり。談春流の変奏を堪能しました。
(http://homepage2.nifty.com/Curious-G/starthp/subpage80045.html より転載)
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